2021年5月10日、AVACUS株式会社が暗号資産交換業(カストディ業務)の申請の取り下げを行うことを発表した。それに伴い、Avacus.ioの現業態についてのサービスを終了とし、お客様からお預かりしているすべての暗号資産の返還を執り行うと説明している。
Avacus.ioは、暗号資産でAmazonのお買い物や、クラウドソーシング、送金機能付きSNS、フリマを利用できるサービスで、2017年12月26日にリリースされてから3年以上、安定運営を続けていた。近年では海外ユーザーの利用も増えていた。
リリース当初は、暗号資産を使いAmazon商品を割引してお得にお買い物ができるShopping機能のみであったが、次々と新機能を追加し、生活全般を網羅するようなサービスとなった。暗号通貨が投機的にもてはやされ本来の思想からかけ離れてしまった世界で、まさに暗号通貨を通貨として使うという全く新しい世界を見せてくれた。
目次
暗号資産交換業を廃止する理由
Avacus株式会社は、2020年12月24日付け、東海財務局から、適正かつ確実な業務運営を確保するための経営管理態勢の構築及びマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係るリスク管理態勢の構築についての改善点について、業務改善計画を令和3年1月25日までに書面で提出すること、及び業務改善計画の実施完了までの間、1か月毎の進捗及び実施状況を翌月10日までに、書面で報告すること等を内容とする業務改善命令を受けていた。
社内において業務改善命令を受けた態勢構築に関する対応について協議し、資金決済に関する法律等において暗号資産交換業者が求められる管理態勢を構築することが困難であるとの結論に達したことから暗号資産交換業から撤退することを決定したと説明している。
やはりスタートアップ企業が交換業を取得するのがハードルは高かったということか。改善内容で求められたKYC導入もコスト面でネックとなったかもしれない。銀行ではKYC導入に平均で5400万ドルもの資金を投資しているという統計もある。
今後のスケジュール
2021年5月10日 | 全ての取引の停止 BTC一括出庫受付開始 ※通常出庫は随時可能 |
2021年6月15日 | 暗号資産交換業廃止 ※廃止日以降も資産の出庫は可能 BTC一括出庫 |
■注意
急なサービス停止発表に自分の資金が心配で不安になった人も多いかもしれません。資産の移動にはまだ時間の猶予があり、廃業日以降も出金可能とのことなのでまずは慌てずゆっくりと出金方法について確認し計画を立てた出金をおすすめします。
出金について
ビットコイン一括出庫
ビットコインの出庫が一度に集中した際のトラブルを防ぐため、通常の出庫とは別に「一括出庫」というオプションが用意された。一括出庫オプションを使えばビットコインの出庫手数料無料(運営負担)で出金可能となる。混雑防止のためこのオプションの利用に協力を呼び掛けている。
VACUS、MUUIを持っている人は、それらの出金にトランザクション手数料としてビットコインが必要なのでまずは先にそちらの出金を済ませましょう。
一括出庫手順
1.BTCウォレットの出金画面に「Full balance withdrawal」とういう項目があるのでクリックする
2. 送金先のBTCアドレスのフォームが出現するのでアドレスを入力し登録をクリック
※必ずBTCウォレットのアドレスを入力してください
※間違ったアドレスを登録した、二度と取り出せなくなる可能性もあります
3.BTCアドレスを登録すると、AVACUSに登録しているメールアドレス宛に確認コードが届くので、それを入力し確認するをクリック
4.一括出庫申請完了
この画面になれば、アドレスが登録でき申請は完了です。
実際に出金対応されのる6月15日なので着金はそれ以降になるでしょう。
必ず6月14日までにアドレスを追加しておく必要があります。
※急ぎ出庫を希望する方は通常出庫を行うことをおススメします
一括出庫キャンセル
一度、申請をした後でも「アドレスを解除する」をクリックして、「Full balance withdrawal」を解除すれば、一括出庫のキャンセルはできそうでした。本当にキャンセルとなったかは、6月15日以降にしかわからないので、不用意に登録や解除はしない方が良いかもしれません。
ビットコインを含む通貨各種の出金
各通貨の出金については以下のような仕様となる。
暗号資産交換業取下げに伴い、5月10日をもって出金時のトランザクション手数料の徴収方法も変更となった。
通貨 | トランザクション手数料 | 出金制限 |
BTC | 0.000342 BTC |
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VACUS | 0.0003BTC |
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DAI | 3DAI |
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BCH | 0.00002 BCH | |
MUUI | 0.0003 BTC |
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ALIS | 100 ALIS |
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※トランザクション手数料は、2021.5.12時点のものです
※トランザクション手数料は、各ブロックチェーンのトラフィック状況により変動する可能性があります
※取引あたりの引き出し金額上限が引き上げられました(5月13日)
今回の仕様変更でVACUS,MUUIを引き出すのにBTCが必要になった。パブリックチェーンへの書き込みにかかるトランザクション手数料は本来そのチェーンに準ずる。ETH系通貨(DAI,ALIS)ならETH、BTC系通貨(VACUS,MUUI)はBTCを、今までは運営が代替する形で支払っていたということのようだ。ETHはAvacusで対応していない為、結果としてVACUS,MUUIのみが仕様変更された形になった。
技術的な仕様を意識せず使っていたユーザーからすれば疑問や不満を抱くのも当然とも言えるが、突然の発表と共に仕様変更をせざるを得ない背景(法絡み、政治絡み、技術絡み)を想像すればいくらでもで同情の余地もある。それらは公にならない性質なものでもあるし、収益モデルの全く違うサービスと対応を比較されたりしてしまうことも不憫に思う部分もあるがサービスとはそういうものだとも言える。
VACUSをどうすればいいのか
VACUSをどうしたら良いのかと困っている人を見かけたので思いついた選択肢をいくつか提案してみます。これが正解とかではなく、あくまでご自身の判断となります。ここにない選択肢もあると思います。VACUSがどうなるのかについては後述していますので、そちらも合わせてご参考ください。
1. Avacus内にBTCがある人
VACUSを取り扱い可能な分散化取引所(以下二つ)のウォレットに送金します。
・Raizer DEX … BTCなどで取引可能
・Counterparty … XCPで取引可能
少し古い&見にくいですがRaizerDEXの使い方はこちらの記事に載っています。
2. Avacus内のBTCが足りない人
不足分のBTCをAvacusへ入金しVACUSを出金。
3. Avacus内には無いがBTCを持ってる人
不足分のBTCをAvacusへ入金しVACUSを出金。
4. BTCを持ってない人
・どこの取引所でBTCを買う(BTCは少額でも
・だれかにBTCを借りる、もらう、買う
・だれかに魅力的な相対取引を持ち掛けて入金してもらう(信用が必要なので注意)
VACUSはどうなるのか
VACUSは、Counterpartyで発行された暗号資産(暗号化トークン)で、保有することによりAvacusサービス内部でさまざまな特典やリターンを受けることが出来た。サービス内ではBTCと毎日同じくらい取引されていた異色なトークンであったが、サービスが終わってしまうことでその存在がどうなってしまうのか注目されるが、何か別の新しい用途となる可能性が示唆されている。(以下Tweet)
ただ、僕が発行したVACUSについては、今のAvacus.io上の役割は失いますがVACUSの役目は終わりません! 詳しくは近日お話できればと思うのでまつかぶをフォローしておいてください!
— まつかぶ@Avacus Inc. CEO (@matsukabu) May 10, 2021
前回のPitchでも軽くお話させて頂きましたが、僕は撤退するという選択も含めて成功に向けてのシナリオに進んでいると思っています。
— まつかぶ@Avacus Inc. CEO (@matsukabu) May 10, 2021
「近日お話できれば」とは言うものの現在顧客の資産を返還する大事なクローズ作業下にあるので、具体的な内容が聞けるまでには、まだ時間がかかるのではないかと勝手に推測しています。VACUSのその後が気になる人は、この隙に出ている情報をもとに起こりうる可能性を予測してみたり、想定される技術範囲の勉強をしつつ、気ままに待つのが良いかもしれません。
AVACUS株式会社はどうなるのか
交換業申請を取下げたことで現在すでに施行されている改正資金決済法に則りAvacus.ioはサービス終了となるが、会社は引き続き別業態を進めていくことになると考えられます。
というのもAvacusはオンチェーン版を進めているという発表もあり、(当時と状況が変わった可能性はゼロではありませんが)近い将来にAvacusの機能をオンチェーン上で出来るようになる日も来るかもしれません。それがAvacusのようにサービスという形になるのか、機能として細分化されたツールのような形になるのか、まだまだそのあたりはわかりませんが。
イベント時には、ブロックチェーンを使った署名や契約を簡単に行える、デジタル意思決定支援サービス「Signr」のリリースを考えていることも発表しており、Defi連携も示唆していたように、ブロックチェーンにまつわる開発を進めていくことには変わりはなさそうです。
新規サービスを含めた2月のイベントで話された内容が気になる方は、下記記事をチェックしてみてください。
編集部よりヒトコト
Avacusを今まで積極的に追いかけてきた編集部にとって「サービス終了」という発表は非常にはショックでした。しかしながら、改正資金決済法の内容と照らし合わせて冷静に考えれば、これは2年前から予測できたひとつのシナリオとも言える。あらゆるサービスが早々に撤退を決定する中でサービス存続をかけて不利益覚悟でこの困難なシナリオを選び戦ってくれたAvacusに感謝したい。
この挑戦によりカストディ業に関する法律上に明文化されていない部分について明らかになったことも業界にとって大きな意義があるだろう。資金力のないスタートアップ企業にとって、高いハードルである交換業者取得に敢えて挑み、業界の人柱となったAvacusの健闘を強く称えたい。
そして引き続き今後の挑戦にも注目していきたい。
参考:
・暗号資産交換業撤退のお知らせ
・経営の専門家や士業従事者らが紐解く「新時代の働き方」 第48回 ブロックチェーンがもたらす働き方改革 – Avacusが”生活の基盤”をつくる
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