日本政府は、ビットコインを資金決済法上の外国通貨にあたらず、これまで通り暗号資産(仮想通貨)に該当するという見解を示した。
先日、エルサルバドル共和国がビットコインを法定通貨とする法案を可決したことを受けて、外国通貨の定義について、日本政府がどのような見解を示すのか注目が集まっていた。
古賀之士参院議員の「ビットコインは資金決済に関する法律上の暗号資産の定義から外れるか」という質問に対する6月25日付けの回答の中で「ビットコインは外国通貨には該当せず」と示された。
外国通貨とは、ある外国が自国における強制通用の効力を認めている通貨と解される - 資金決済に関する法律(第五十九号、第二条第五項第一号)
日本の法律上、外国通貨は上記のように定義されている。
強制通用の効力があるのかという部分がどう解釈されるのか注目されていた。
今回の政府の回答には「エルサルバトル共和国の法律には、支払いを受け入れる義務が免除される規定がされており、当該外国通貨には該当せず、同項に規定する暗号資産に該当しているものと考えている。」と書かれている。
支払いを受け入れる義務が免除される規定があるので、強制通用力がないと見なしたということになる。
強制通用力とは、通貨が金との兌換(だかん)によってではなく、法律によって支払の手段として流通しうる力。日本では、日本銀行券は無制限の通用力をもつが、政府発行の臨時補助貨幣はその額面金額の二〇倍以内に限り通用力がある。ー 日本国語大辞典
「強制通用力」とは何か辞書で調べてみます。国語辞典には上記のように書かれていました。
面白いのが、日本銀行券(つまりお札)は無制限の通用力をもつが、政府発行の臨時補助貨幣(硬貨)には条件があるのです。
例えば、買い物をして1万円を支払う時に、500円玉20枚で支払うことは可能ですが、100円玉100枚で払おうとした場合、100円玉が強制通用力を持つのは20枚までなので、100円玉100枚の場合、店側は受け取りを拒否することができるというわけです。
これも「支払いを受け入れる義務が免除される規定」と見なすなら、同じ道理で日本円も法定通貨ではないということになってしまいそうです。(しかし、硬貨を受け取らないことと、その通貨そのものでの決済の免除とは一緒にするのは厳しいという見解もあります。)
強制通用の効力(以下「強制通用力」という。)を担保する主体は、主権を有する国家又はこれに準ずるものである。外国の通貨とは、ある外国が自国における強制通用力を認めている通貨をいい、我が国における強制通用力が認められているものではない。
外国の通貨とは、ある外国が自国における強制通用力を認めている通貨をいうことから、ビットコインについて強制通用力を認めている外国が存在しない限り、ビットコインが外国の通貨と同様の性質を持つと解することは困難である。
日本政府は、平成26年3月18日の回答で上記のように示している。
ビットコインの強制通用力を認める外国が存在するようになるとは、この当時全く想定していなかったかもしれない。法定通貨として認めた外国が存在した今でも政府は依然として慎重な姿勢だ。
慎重であること自体は悪いことではない。そもそも法とは完全なものではなく常に変わっていくものだ。
しかし、この分野において色々な矛盾が見え始めたことからも法的な議論の遅れは非常に顕著だ。今後、法改正についてより迅速に議論が行われなければ日本はこの分野において完全に主体性を失うだろう。